血圧が高い状態のまま放置しておくと、血管に強い圧力がかかり動脈硬化が進行します。動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中など命に関わる疾患の原因となるため、血圧が高い場合は早めに治療を受けてコントロールすることが大切です。
高血圧を指摘された方のなかには、「どうすればすぐに血圧を下げられるの?」「即効性がある治療法が知りたい」と思われている方もいるでしょう。
そこで今回は、すぐに血圧を下げる方法があるのかについて詳しく解説します。飲み物や食べ物で血圧を下げられるのかも紹介しているので、参考にご覧ください。
目次
1.どれくらい血圧が上がると「高血圧」になるの?
日本高血圧学会では、以下のように高血圧の診断基準を設けています。
診察室血圧 | 家庭血圧 |
140/90 mmHg以上 | 135/85 mmHg以上 |
この10年間で、日本における血圧の平均は徐々に低下しています。しかし、まだまだ高血圧の方が多くいるのが実情です。20歳以上の日本人のうち、約2人に1人は高血圧だといわれています。
2.高血圧になる原因
高血圧になる原因は一つではありません。さまざまな要因によって血圧が高くなります。
2-1.生活習慣
日本人が高血圧になる最大の原因は、塩分の摂りすぎだといわれています。塩分を摂りすぎると、塩分濃度を下げるために血液に水分が多く集まってくるため、血圧が上がってしまうのです。
日本高血圧学会は、高血圧の方の塩分摂取量を1日6 g未満にするように推奨しています。しかし、「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」によると食塩の摂取量の平均は10.1 gとかなり高い状態です。
2-2.遺伝
高血圧には、とくに原因となる疾患がなく発症する本態性高血圧と、甲状腺や副腎などの病気が原因で発症する二次性高血圧があります。本態性高血圧の発症には遺伝も関与していることが明らかです。遺伝因子の寄与度は30~70%程度といわれています。
2-3.年齢
高齢になると、高血圧を発症しやすくなります。年齢とともに血管の弾力性が低下し、血液を送り出すのに大きな力が必要になるためです。
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」の結果によると、年齢別の平均血圧(降圧薬を服用している方は除外)は以下のようになっています。この数値を超える場合には、要注意と考えてよいでしょう。
男性 | 女性 | |||
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張血圧 | |
20~29歳 | 115.9 | 68.1 | 105.7 | 63.8 |
30~39歳 | 117.2 | 73.8 | 108.0 | 66.4 |
40~49歳 | 125.4 | 80.6 | 113.7 | 70.9 |
50~59歳 | 129.7 | 81.0 | 121.8 | 74.5 |
60~69歳 | 134.1 | 78.3 | 130.6 | 76.7 |
70歳以上 | 133.9 | 74.5 | 133.1 | 73.9 |
2-4.肥満
日本では、肥満に伴う高血圧が増加しているといわれています。BMIが20未満の方が高血圧を発症するリスクを1とすると、BMIが25.0~29.9ではリスクが1.5~2.5倍にもなるため、高血圧を予防するには体重管理を行うことが大切です。
「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、肥満(BMI25以上)の方の割合は男性で33.0%、女性で22.3%となっています。ここ10年で肥満者の割合が有意に増加していることから、肥満予防対策を強める必要があるでしょう。
2-5.ストレス
心理的・社会的ストレスによって高血圧を発症するリスクが2倍以上も高まることが分かっています。ストレスを感じると、交感神経の働きが亢進して心拍数が増加したり小動脈が収縮したりするため、血圧が上がりやすくなるのです。
3.高血圧によって発症リスクが高まる疾患
高血圧になってもほとんど自覚症状がないため、「治療しなくても平気なのでは?」と思われる方もいます。しかし、高血圧の状態を放っておくのはとても危険です。高血圧が命に関わる病気を招くこともあります。
3-1.心血管疾患
高血圧の状態が続くと、動脈硬化が進行して狭心症や心筋梗塞、脳出血や脳梗塞などの心血管疾患を発症することがあります。狭心症は心臓を取り巻いている冠動脈が狭くなる病気、心筋梗塞は冠動脈が完全に塞がってしまう病気です。
脳出血は、脳動脈瘤などの血管異常に高血圧があると発症しやすくなります。脳梗塞は、脳血管が詰まって細胞が死滅し、麻痺などの身体障害を生じる病気です。
3-2.腎臓障害
腎臓は余分な塩分や水分の排泄に関わっています。高血圧になると腎臓の血管が動脈硬化を起こし、腎臓の機能が低下することがあるため注意が必要です。
また、腎臓の働きが悪くなると、塩分と水分の排泄がうまくいかなくなり血液量が増えて高血圧になりやすくなります。
3-3.認知症
意外かもしれませんが、高血圧は認知症のリスクを上げる原因です。認知症というとアルツハイマー型認知症が思い浮かぶかもしれませんが、最近では、動脈硬化を原因とする脳血管性認知症がじわじわと増えています。
4.即効性のある高血圧の治療法は存在するの?
健康診断などで高血圧を指摘されると、「すぐに血圧を下げられる即効性がある方法はないのかな?」と思われる方もいるでしょう。たしかに、すぐに血圧を下げることができれば長期的に薬を服用したり生活習慣を改善したりする必要もないので楽だと思われるかもしれません。
しかし、残念ながら、お薬を飲む以外に即効性のある高血圧の治療法はないのが現実です。基本的な生活習慣の改善を試しながら、1か月程度で振り返って改善がない場合、降圧薬の服用を検討していくことになります。
5.高血圧を治療する方法
高血圧は生活習慣が大きく関わっていることもあるため、日々の生活を見直すことが大切です。また、血圧の状態や体の健康状態に合わせて降圧薬を使用することもあります。
5-1.塩分の摂取量を減らす
血圧が高い方は、まず塩分の摂取量を減らしましょう。高血圧の方の塩分摂取量の目標値は、1日あたり6 gです。
ラーメンなどの麺類の汁を全部飲むと、これだけで6 g近い塩分を摂取することになるため、汁は飲まずに残すようにしてください。また、減塩調味料を使ったり香辛料や香味野菜などを活かした味付けをしたりするのもおすすめです。
5-2.節酒・禁煙を行う
大量の飲酒は血圧を上げる原因となります。お酒を飲む習慣がある方は、節酒を心がけましょう。喫煙している方は禁煙を行うことも重要です。タバコに含まれているニコチンは、血管を収縮させて血圧を上昇させます。
喫煙者は非喫煙者と比べて有意に高血圧を発症しやすいことも分かっているため、喫煙している方は禁煙しましょう。
5-3.カリウムを摂る
カリウムには、ナトリウムの排泄を促進して血圧を下げる効果があります。バナナやオレンジ、トマトやパセリなどの果物や野菜はカリウムが多く含まれているので積極的に摂るようにしてみてください。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、男性で1日あたり2,500 mg、女性で2,000 mgが目安量として設定されていますが、WHOでは男女関係なく1日3500㎎のカリウム摂取を推奨しています。
5-4.適度な運動を行う
運動を行うと、一時的に血圧が低下します。運動後の降圧効果は約22時間持続するといわれているため、血圧が低下した状態を維持するためにも適期的に運動を行うことが大切です。
1回につき10分以上の運動を1日40分以上行うように推奨されています。有酸素運動を優先し、ジムに通うような方は、筋トレなどのレジスタンス運動を組み合わせても良いとされています。
5-5.ストレスを溜めない
ストレスを溜め込むと血圧が上がりやすくなるため、こまめに発散しましょう。体を動かしたりゆっくり休んだりと、自分に合ったストレス発散法を見つけてみてください。
5-6.降圧薬を服用する
生活習慣の見直しを行っても血圧がうまくコントロールできない場合や、すぐに治療が必要なほど血圧が高い方(160/110 mmHgを超える場合はすぐに、140/90 mmHgを超える方は1か月程度の生活習慣改善後に低下しない場合)は降圧薬を服用します。
降圧薬がうまく効き血圧が十分に下がった場合でも、継続して治療を行うことが必要です。服用を止めると、再び血圧が上がってしまう可能性があります。自己判断で服薬を中止せず、医師の指示に従って服用しましょう。
6.血圧を下げるのに役立つ食べ物や飲み物
血圧を下げるためには、生活習慣の改善が必要です。食べ物や飲み物にも気を遣うことで、血圧を下げやすい環境を作れるでしょう。
6-1.血圧を下げる食べ物
血圧を下げる働きがある食べ物には、以下のようなものがあります。
• 枝豆
• かぼちゃ
• ごぼう
• 小松菜
• ほうれん草
• えりんぎ
• ブロッコリー
これらの食べ物には塩分を体外へ排泄するミネラル(主にカリウム)や、動脈硬化を防ぐ食物繊維が豊富に含まれています。
あわせて読みたい、血圧を下げる食べ物の詳細記事はこちら。
6-2.血圧を下げる飲み物
すぐに血圧を下げる効果がある飲み物はありませんが、血圧低下に役立つ飲み物は存在します。
• 野菜ジュース
• コーヒー
• 緑茶
• ココア
• 豆乳
• 食酢飲料
逆にアルコールや塩分の多い汁物、スポーツ飲料などは血圧が上がりやすくなるので飲み過ぎに注意してください。
あわせて読みたい、血圧を下げる飲み物の詳細記事はこちら。
7.血圧を下げる市販薬はある?
カルシウム拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬などの降圧薬は、市販では取り扱いがありません。そのため、降圧薬を服用するためには医療機関を受診する必要があります。
血圧が高い方向けのサプリメントや健康食品などは市販で手に入りますが、こちらは降圧薬の代わりとはならないので注意してください。
8.血圧が気になるなら「イーメディカル」へ
「健康診断で高血圧を指摘された」
「高血圧が気になるけど、どこの病院を受診したら良いか分からない」
このような方は、「イーメディカル」へご相談ください。イーメディカルは、通院時間ゼロ分でオンライン診療を受けられるサービスです。
8-1.保険適用でオンライン診察を受けられる
イーメディカルはオンライン診療に特化したサービスですが、診察代や薬代は保険適用となります。そのため、対面で診察を受けたときと料金はほとんど変わりません。高血圧のほか、脂質異常症や高尿酸血症、花粉症などの診察も受けられます。
8-2.処方された薬は自宅まで郵送
処方された薬は、自宅のポストまでお届けします。薬をもらうために薬局で長時間待つ必要はもうありません。診察から薬の受取まで自宅で完結するため、忙しい方や近くに病院がない方でも気軽に利用できます。
8-3.専門チームにいつでもチャットで相談できる
イーメディカルに入会すると、専用アプリのチャット機能でいつでも専門チームに相談できるようになります。血圧や体調のこと、日々の生活習慣などで気になることがあればいつでもご相談ください。
9.即効性がある血圧を下げる方法についてのQ&A
高血圧はいつ誰がなってもおかしくありません。血圧が高くなった場合は、適切な方法で早めに対処することが重要です。
9-1.血圧を下げるツボはありますか?
手の甲側の親指と人差し指の間にある合谷と呼ばれるツボは、血圧を下げる働きがあるといわれています。
9-2.高血圧の症状にはどのようなものがありますか?
高血圧になっても自覚症状はほとんどありません。人によっては頭痛やめまい、肩こりなどの症状が起こることがあります。
9-3.血圧の薬を飲み始めると一生やめられないのは本当ですか?
高血圧は、降圧薬を飲んだからといって完治する病気ではありません。そのため、長期間にわたって服薬を続ける必要がある場合が多くあります。ただし、生活習慣の見直しによって薬の量を減らしたり服用を中止したりすることも可能です。
お薬に関する詳細記事はこちら。
10.まとめ
即効性がある血圧を下げる方法というものは、残念ながら存在しません。しかし、生活習慣を見直したり降圧薬を服用したりすることで血圧をコントロールすることができます。
高血圧の状態のまま放置しておくと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を招くことがあるため、血圧が高いことに気がついたら早めに医療機関を受診しましょう。
イーメディカルでは、最短翌日に専門医へ相談できます。スマホ1台で受診できるので、高血圧が気になる方はお気軽にご相談ください。