「運動療法で血圧を下げられると聞いたけど本当?」
「具体的にはどのような運動をどれくらいしたら効果があるの?」
高血圧の治療には運動がよいと聞いたことはあっても、実際に何をどのくらいしたらいいのかわからない方が多いのではないでしょうか。そこで今回は、血圧を下げるのに効果的な運動療法の方法や効果、運動時の注意点などについて詳しく解説します。
目次
1.高血圧を放っておくとどうなるの?
高血圧には自覚症状がほとんどありません。それなのに、なぜ治療しなければいけないのか不思議に思っている方もいるのではないでしょうか。
高血圧を放っておくと、血管の弾力性が次第に失われていき狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や脳出血などを起こしやすくなります。
厚生労働省が発表している令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況によると、日本人の死因は1位が悪性新生物(がん)、2位が心疾患、3位が老衰で4位が脳血管疾患でした。高血圧を完全に予防できれば年間に10万人もの方の命を救えるといわれています。
2.高血圧を改善する運動療法の方法と効果
運動療法で高血圧の改善ができるのには、様々な理由(メカニズム)があるとされていますが、ひとつには、血管の弾力性が改善することによると考えられます。。血管が伸び縮みしやすくなることで、高血圧が改善されると考えられているのです。逆に、運動不足は心血管病の原因や、健康寿命の短縮につながることが明らかとなっています。そもそも高血圧であってもなくても、運動に取り組むことは良いことです。
では、どのような運動をどれくらいすることで血圧を下げられるのか、詳しく見ていきましょう。
2-1.有酸素運動
〈運動の種類〉
有酸素運動とは、酸素を取り込みながら行う筋肉への負荷が少ない運動のことです。ジョギングやウォーキング、エアロビクス、自転車や水中運動などが該当します。
〈運動の効果〉
有酸素運動を行うことで、収縮期血圧(上の血圧)が2~5 mmHg、拡張期血圧が1~4 mmHg低下すると期待されています。
また、運動直後に血圧が下降し、そのまま下降した状態が約22時間続くことも特徴です。
〈運動を行う時間〉
1回10分以上の有酸素運動を1日に合計で40分以上行うことが推奨されています。約5メッツの強度で月に2~12回の運動を週に0.5~2時間行うことも収縮期血圧の低下に効果があるとされているため、まずは無理の範囲で運動を習慣化してみましょう。
ちなみに5メッツとは、毎分107 mの速さで早歩きを行うくらいの強度に相当します。
2-2.筋力トレーニング
〈運動の種類〉
ダンベルフライやダンベルスクワット、チェストブレスなどの軽い筋力トレーニングも効果的です。
ただし、筋力トレーニングのみを行った場合の有効性についてはまだ明確にわかっていない部分もあります。
〈運動の効果〉
筋力トレーニングを行うことで血圧が有意に低下したというデータがある一方で、あまり有意な差はなかったというデータもあります。
そのため、有酸素運動と組み合わせて行うようにしましょう。筋力トレーニングは骨粗しょう症や腰痛、膝痛などの予防に効果的です。
〈運動を行う時間〉
有酸素運動と合わせて1回10分以上、1日に40分以上の運動を行うことが推奨されています。
3.運動療法は高血圧以外の生活習慣病にも効果的
運動療法は、高血圧はもちろんほかの生活習慣病の予防や治療にも効果的です。生活習慣病はその名前のとおり生活習慣が絡んで起こるため、運動を取り入れることで改善することができます。
3-1.糖尿病
糖尿病とは、血糖値が高い状態が慢性的に続く疾患のことです。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を中等度の強度で行うことで、血糖値の低下が見られることがわかっています。
中等度の強度とは、50歳未満の方なら心拍数が100~120拍/分、50歳以上の方なら100拍/分になる程度の運動のことです。週に3~5回、1回あたり20~60分の運動を1週間に合計150分以上行うことが推奨されています。
3-2.脂質異常症
脂質異常症とは、脂質の値が高すぎたり低すぎたりする状態のことです。LDLコレステロールは140 mg/dL以上、HDLコレステロールは40 mg/dL未満になると脂質異常症と判断されます。
ウォーキングやスロージョギングなどの有酸素運動を1日30分以上、少なくとも週に3日行いましょう。運動時間は1回10分を1日3回で合計30分以上としても問題ありません。
4.高血圧の運動療法を行うときの注意点
高血圧を改善するための運動療法は、残念ながらどなたでも行えるというものではありません。高血圧の状態によっては、運動療法が適さない場合もあります。また、運動によって体に負担をかけてしまうこともあるため注意しましょう。
4-1.運動療法が対象となるのはⅡ度高血圧以下の方
運動療法が対象となるのは、Ⅱ度高血圧以下の方のみです。高血圧は、血圧の値によって下記のように細かく分類されています。
治療を行っていないⅢ度高血圧の方が運動療法を行うと、かえって脳や心臓に負担をかけることになるため自己判断では行わないようにしてください。
| 診察室血圧 | 家庭血圧 |
Ⅰ度高血圧 | 140~159かつ/または90~99 mmHg | 135~144かつ/または85~89 mmHg |
Ⅱ度高血圧 | 160~179かつ/または100~109 mmHg | 145~159かつ/または90~99 mmHg |
Ⅲ度高血圧 | ≧180かつ/または≧110 mmHg | ≧160かつ/または≧100 mmHg |
4-2.脳や心臓に疾患がある方は医師に相談する
もともと脳や心臓に疾患がある方も運動療法には注意が必要です。運動によって逆に負担が増えて疾患が悪化する可能性があります。
運動療法を行えるのは、Ⅱ度高血圧以下で脳や心臓の疾患がない方に限られると思っておきましょう。
ただし、疾患の程度によっては運動療法を行えることもあります。まずは担当医に相談して運動療法が適しているかを判断してもらってください。
4-3.軽めの運動から始める
「毎日運動しよう!」と張り切って、いきなり負荷の高い運動から始めるのは危険なので避けましょう。運動しようという気持ちは大切ですが、体にいきなり負荷をかけることで筋肉や骨に大きな負担がかかることがあります。
普段あまり体を動かす習慣がない方は、軽く近所を散歩したりストレッチをしたりなど、軽い運動から始めてみてください。
4-4.水分補給を行いながら運動する
運動中や運動前後は、水分補給をしっかり行いましょう。水分不足になると熱中症や脱水症状を起こすリスクが高まります。
ただし、経口補水液の利用には注意してください。経口補水液には塩分が多く含まれているため、高血圧の方には適さない場合があります。通常のスポーツドリンクは糖分が多く含まれているため、カロリーゼロのスポーツドリンクか麦茶を飲むとよいでしょう。
5.高血圧を改善するために運動以外で取り組みたいこと
高血圧を改善するためには、運動療法のほかに食生活や生活習慣の改善を行うことも大切です。一度に全部を行おうとすると挫折の原因にもなるため、まずは日常的に取り組めそうなものから始めてみてください。
5-1.食生活を改善する
高血圧を改善するためには、まず食塩の摂取量を減らすことが大切です。血圧が高めの方は、1日の食塩摂取量を6 g未満に抑えるように心がけましょう。
令和元年に行われた国民健康・栄養調査では、男性で平均10.1 g、女性で平均9.3 gの食塩を1日に摂取していると報告されています。平成21年では男性で11.6 g、女性で9.9 gであったことから食塩の摂取量は徐々に減ってきていますが、6gをまだまだ大きく超えている状況です。
5-2.節酒を心がける
大量に飲酒をすると、血圧が上がりやすくなります。普段からお酒をよく飲むという方は量を控えるように心がけましょう。
血圧を下げるためには、1日の飲酒量を男性ではビール中瓶1本、女性ではビール中瓶1/2本以下にすることが推奨されています。
5-3.禁煙する
タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させるため、喫煙すると血圧が上がります。習慣的に吸うことで血圧が上がると考えられているため、喫煙している方は禁煙を心がけましょう。
喫煙者と非喫煙者とを10年間にわたり追跡した研究では、1日に15本以上吸う方で高血圧を発症した方が多いことがわかっています。
5-4.適正体重を維持する
BMIが25以上の肥満の方では高血圧になるリスクが高くなるため、適正体重を維持することが大切です。若年期から中高年にかけての時期に大きく体重増加が見られる方ほど高血圧を発症しやすくなります。
年齢を重ねると肥満の方の割合が増えていくため、基礎代謝に合わせた食事量を心がけ、適度な運動を行いましょう。
5-5.ストレスを溜め込まない
ストレスを溜め込む生活をしていると、高血圧を発症するリスクが2倍以上も増えることがわかっています。実際に、高血圧の方ではそうでない方よりも強いストレスにさらされていました。
ストレスを溜め込まないように趣味の時間を取ったり、運動をしたりなど自分なりの対処方法を行いましょう。
5-6.血圧を毎日測る
できれば、血圧を毎日同じくらいの時間に測るように習慣化してください。血圧を数字として毎日見ることで「もう少し運動をしたほうがいいかな」「まだ少し血圧が高めみたい」など、健康状態を可視化できます。
毎日測ることで健康意識を高めることにもつながるため、できるだけチェックするようにしましょう。
6.高血圧の改善方法を医師に相談したい方は「高血圧イーメディカル」をご活用ください
高血圧について気になっていることはありませんか?運動療法をこのまま続けていいのか迷っていませんか?医師に聞きたいことをいつでも相談できる便利なサービスが、「高血圧イーメディカル」です。
6-1.高血圧イーメディカルとは
高血圧イーメディカルは、オンライン上で高血圧の診察ができるサービスのことです。高血圧を専門に診ている医師があなたの血圧状況を常に把握し、的確な運動療法のプランや治療方法を提案します。治療薬が必要な場合は自宅まで郵送しますので、薬局に足を運ぶ必要もありません。
6-2.「モニタリングプラン」を活用して無理なく運動療法を続けよう
「血圧を毎日測りたいけど、血圧計が自宅にない」
「このまま運動療法だけを続けて大丈夫なのか気になる」
このような方は、高血圧イーメディカルのモニタリングプランを活用してみてはいかがでしょうか。モニタリングプランは月額1,650円(税込)で、以下のようなサービスが含まれています。
- 1万6,000円以上する高機能な血圧計を無償貸し出し
- 血圧計とアプリを連動することで自動的に血圧を記録
- 医師が血圧をモニタリングしてくれる
- チャットを使って気になることを医師に何度でも相談できる
血圧がグラフ化されるので、運動療法の効果が出ているのかを簡単に確認できます。不安なことがあれば医師にいつでも相談できるので、自信をもって運動療法に取り組めるようになるでしょう。
7.高血圧の運動療法に関するQ&A
最後に、運動療法に関してよく聞かれる質問にお答えします。
7-1.運動すると血圧が下がる理由はなんですか?
運動で血圧が下がるのは、血管の弾力性が改善されたり神経の緊張が緩和されたりするためです。糖尿病や脂質異常症の改善や予防にもなるため、毎日の生活のなかにぜひ運動を取り入れましょう。
7-2.運動すると逆に血圧が上がりませんか?
負荷の高い運動は血圧を上げる恐れがあります。そのため、運動療法を行う場合は低強度から中強度の運動を行うようにしてください。
心拍数が100~120拍/分を超えない程度が最適です。軽いウォーキングやジョギングなどを行うとよいでしょう。
7-3.血圧が下がったら運動療法はやめていいですか?
血圧が下がってもやめずに継続することが大切です。運動療法をやめると、1ヶ月以内に血圧が元に戻るといわれています。
7-4.運動をいつ行うのが効果的ですか?
運動はいつ行っても構いません。ただし、食後から30分以内に運動をすると消化不良を招くことがあるため、1時間後を目安に始めましょう。また、人によっては寝る直前に体を動かすと寝付きが悪くなる方もいるため、自分のライフスタイルに合った時間帯に運動をするようにしてみてください。
7-5.具体的になんの運動をするのがおすすめですか?
ウォーキングやジョギング、水中ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。1回10分以上の運動を1日合計40分行いましょう。
8.まとめ
高血圧のための運動療法としては、有酸素運動が推奨されています。ウォーキングやジョギングなど、軽い運動で構いませんので毎日の習慣にしてみましょう。
慣れてきたら筋力トレーニングも取り入れてみてください。あわせて行うことで、腰痛や膝痛、骨粗しょう症の予防につながります。
運動療法に少しでも不安がある方は、高血圧イーメディカルをぜひご活用ください。モニタリングプランでは、あなたの血圧を医師がしっかりチェックし、最適な運動療法や生活改善ができるようサポートしていきます。