家庭用血圧計の普及率は約4,000万台と推定される日本(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。今や1家に1台ある〝家電〟といえるほど。
高血圧は、加齢に伴い誰でもなりやすい病気です。だからこそ、血圧計がどの家にもあり、いつでも測れる環境があることは重要なのですが
「毎日計測しているか?」
「測ったデータを正しく理解できているか?」
と言われると、自信がないという人も多いのではないでしょうか。今回は、血圧測定がなぜ必要なのか、そして気になる正しい測り方について解説します。
目次
1.なぜ、血圧測定をする必要があるの?
1-1.血圧ケアのスタートは、家庭での血圧測定から
厚生労働省が実施している3年に1度の大規模調査「国民生活基礎調査」。令和1年(2019年)の調査で分かったことは、男女ともに、通院している疾患原因の第1位は「高血圧症」ということ。その多くが、特定の病気を原因としない、本態性高血圧であることが分かっています。
本態性高血圧は、遺伝的な体質に加え、塩分の摂取過多や運動不足などの生活習慣によって起こるもの。ただ、高血圧には顕著な症状が見られないこともあり、高血圧かもしれない…と気づくのは、健康診断の結果からだというのが現状です。
血圧が高ければ、まず勧められるのが、日常の血圧ケアと生活習慣の見直しです。そして、血圧ケアの要となるのが、家庭での血圧測定なのです。
1-2.一定の条件下で測れる家庭血圧は、信頼性が高い
家庭用血圧計の普及が進み、その総数からすれば血圧計は1家に1台ある家電(医療機器)といっても過言ではありません。それだけ、血圧は気になるもので、医療機関で測った結果、家での血圧測定をすすめられるからなのです。
高血圧は別名「サイレントキラー」ともいわれ、自覚症状がないまま、脳心血管疾病を引き起こすリスクを高めるものです。男女ともに死因の上位にランクインされているのはもとより、高齢者では要介護になる原因のトップになっています。
とはいえ、高血圧であることを自覚していれば、血圧ケアによる予防・改善が可能で、専門家(医師)の的確な診療を受けることもできます。その基準となるのが、家庭での血圧測定で得た数値なのです。家で血圧を測定する最大の意味は、そこにあるのです。
ではなぜ家で測る血圧が重視されるのか。それは、測る環境や時間によって数値が変化する血圧を、同じ条件下で測定することができるからなのです。
2.家での血圧測定のメリットは何?
例えば体温計は、どの家にもあると思いますが、何となく熱っぽいと感じたら、体温を測りますよね。その結果、平熱や微熱程度であれば様子をみる、高ければ医療機関を受診するなどの判断をするとのではないでしょうか。体重測定も同じですよね。日々の体重の変化で、太ったか痩せたかを知ることによって、食事の管理をする人も多いのではないでしょうか。
家での血圧測定も、同様。つまり、体調などの変化を数値で可視化できることがポイントなのです。
体温に、平熱・微熱・高熱という基準があるように、血圧にも正常血圧と高血圧には基準があり、何回か測ってみて、いつも基準値より高ければ、高血圧を気にして医療機関を受診するきっかけになるのです。
では、家庭での血圧測定のメリットは、どこにあるのでしょうか。
2-1.死亡リスクの高い脳心血管疾患の予防につながる
日本人の死因の第1位は、男女とも悪性新生物(がん)ですが、が同じく上位を占めるのが心筋梗塞や脳梗塞などの脳心血管疾患。何も予防策をしないまま、突然の死が訪れることも多々あります。また、命はとりとめたものの、その後に障害が残ることも考えられます。
脳心血管疾患の要因は高血圧。がんの予防はなかなかむずかしいものですが、高血圧による脳心血管疾患は、日々の血圧測定で血圧を管理し、予防することが可能なのです。
2-2.家庭血圧のデータは信頼性の高い数値として、医師のリスク評価に有効
家での血圧測定で得られた数値は、測定条件や環境を一定化することができることから、医療機関で測る血圧値よりも正確性が高いとされています。
いつも異なる条件下で測らざるを得ない医療機関での血圧測定よりも、毎日決められた時間に家で行う血圧測定で得た数値は、確かな医療情報になります。医師が診療方針を決めるうえで評価対象として有効であることは、日本高血圧学会でも世界的に広く認められています。
2-3.脳心血管疾病以外にも、自分自身の健康管理に役立つ
血圧の数値は、高くても心配ですが、低くても リスクが潜んでいます。
家で毎日、血圧計測をすることで、自分の血圧値の変化を知ることができます。高くても、低くても、気になる数値が続くことが分かれば、専門家の判断を仰いだり、年に1度の健康診断以外に検査を受けたりするきっかけにもなり、疾病の早期発見にもつながるのです。
つまり、家での血圧測定は、健康管理の一環としても役立つものなのです。家庭での血圧測定のメリットについて、ご理解いただけたでしょうか。
1日の生活のなかでのルーティンとして、ぜひ、家庭での血圧測定を取り入れたいものですね。
3.病院で測る血圧と、家で測る血圧の数値が違う。家で測る血圧って、本当に信頼できるの?
実は、病院などの医療機関で測る血圧と、家で測る血圧の数値に違いがみられるのは、よくあることです。専門家が測るものですから、どちらかといえば、医療機関で測る血圧のほうが正確だと思いますよね。
ところが、血圧は、測る時間・その日の天候や気温・測定前の行動や心理状態(ストレスなど)の影響を受けやすいことから、測定する条件が一定ではない医療機関で測るよりも、条件を整えやすい家での測定のほうが、より信頼性が高いといわれています。
では、どのようなときに数値の違いが現れるのでしょうか。
3-1.血圧が高く出る場合➀:白衣高血圧(診療室高血圧)
病院で診療を受けるとき、ドキドキしたり、緊張したりすることはありませんか?
こういう状況では、血圧値が高く出ることが多々あります。
白衣高血圧とは、病院や健診で測ると基準値を超えており、高血圧と判断されてしまうものの、家で血圧を測ると高血圧ではないというケースです。これは、医師や看護師の白衣を見ることによる無意識の血圧上昇が、一因と考えられます。
ただ、病院で測る以外では大丈夫だと安心できるものではありません。
白衣高血圧がみられる人は、将来的に持続性高血圧になるリスクが高いという研究報告もあります。白衣高血圧であっても、高血圧を早期発見するため、家庭血圧を気にかけていくことが重要なカギになります。
3-2.血圧が高く出る場合③:気温の寒いとき
一般的に、寒い季節は体温維持のために血管が収縮することから、血圧は高めに出るのがふつうです。家で測る血圧も、寒い寝室と暖かいリビングで測るのでは差異が出るほどです。
例えば、冬の寒い時季に医療機関へ着いた直後に血圧を測れば、それだけでも高い数値がでることがあります。逆に、運動後や暑い季節に血管が拡張している状況では、血流がよくなることから、血圧は低くなります。
家庭で測る血圧の数値に信頼性があるというのは、気候や外気温に左右されず、同じ状況下で測ることが可能だからです。
自分を快適な場所に置いたときの血圧がどのくらいなのかを知ることは、どのようなときにどんな治療をするのが適切なのかを判断する際に、とても重要な情報となります。
家庭血圧の数値が重要視されるのは、こんなところにも理由があるのです。
自分で測る血圧値に不安があるという人も、ぜひ、家庭での血圧測定を習慣化してみましょう。そこで得られる数値は、医師にとって重要なデータになるだけでなく、将来の健康への安心への道しるべになるのです。
4.正しい血圧測定の方法。そのポイントは?
家庭での血圧測定のメリットは上記で述べた通りですが、より正確な数値を得るためには、毎回同じ条件で測るということが大切です。そのポイントは4つ。
4-1.ポイント➀:血圧は、静かで、過ごしやすい部屋で測ること
落ちついて過ごせる静かな環境で、暑さや寒さを感じない室温の部屋で測りましょう。測定中は、話をしたり、動いたり、力を入れないことも大切です。
4-2.ポイント②:血圧は、椅子に座り、リラックスして測ること
なるべく背もたれのある椅子に座り、足は組まずに両足は床につけるようにしましょう。また、椅子に座ったら1~2分安静にして、リラックスして測ることもポイントです。
4-3.ポイント③:血圧は、常に同じ側の腕で測ること
左右どちらの腕でもかまいませんが、どちらかが高い場合には、高いほうの腕で測りましょう。一般的には、右腕のほうが高く計測されるようです。そして、常に同じ側の腕で測るのがポイント。カフは心臓の高さに合わせるようにしましょう。
なお、左右で血圧の値に20mmHg程度以上の差がある場合には、血管炎や血管狭窄などの病気も想定されますので、医師に相談しましょう。
4-4.ポイント④:血圧は、測るタイミングを決めて、朝晩2回測ること
朝は起床後の1時間以内に排尿して、投薬・朝食の前に。夜は食事・服薬・入浴・排尿をすませ、寝る前に測るのがポイント。測定前には、コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲料はとらないように。また、喫煙や飲酒もNGです。お酒を飲まれる方は、飲み始める前に測るのもよいでしょう。
この4つのポイントを守ることで、より正確に家庭での血圧測定ができます。その数値こそ、自分自身の健康管理に役立ち、医療機関との重要なコミュニケーションツールになるのです。
5.血圧計は何かおすすめ?測った血圧値は、どうすればいいの?
測るならば、正確に測りたいものですよね。ならば、どのような血圧計を選べばいいのでしょうか。
5-1.家庭用血圧計を選ぶなら、上腕式血圧計を
家庭用血圧計には、上腕式・手首式・上腕式全自動・ウェアラブル式などの種類があります。どのタイプにも、メリット、デメリットはあるのですが、日本高血圧学会でも推奨しているのが、上腕式血圧計です。
正しく血圧を測るには、カフを心臓の位置に合わせるのがポイント。手首式血圧計は、その簡便さもあり広く普及していますが、カフを巻いた手首を心臓の位置まで上げて測る必要があります。その位置が違えば、測定した数値は必ずしも正しいとは限りません。
最近では手首式でも、正しい位置に装着されているかどうかを知らせる機能がついているものもありますが、やはり手首式は正確性の面では上腕式に劣るというデメリットはあります。
血圧ケアをするのであれば、より正確な数値が出るものを選びたいものです。
5-2.測った血圧値は、必ず記録する
血圧は、測って数値を確認しただけでお終いではありません。記録して残すことが、管理につながるのです。記録の方法は、メモ帳などに書いて残すだけでも、「血圧手帳」のような専用のノートに記録しておくなど、色々とありますが、とにかく残しておくことが重要。朝晩それぞれ、2回ずつ測り、その平均値を記録することが基本とされていますが、手書きならば、2回の数値を記録しておくことでも構いません。
最近では、家庭用血圧計のメーカーのサイトに記録用のアプリがあるなど、便利に記録することができるようになりました。また、Bluetooth通信機能が搭載された血圧計ならば、自動的に記録しておくことも可能です。これは、血圧計選びのひとつの指針になりますね。
6.毎日の血圧管理を、健康維持に役立てましょう!
毎日の家庭での血圧測定は、今や健康管理には欠かせないルーティン。医療機関を受診しただけでは分からない心血管へのリスクを評価する、大切なデータになります。
自覚症状アがないからと放置しがちな高血圧ですが、実はサイレントキラー(静かな殺人者)と呼ばれるほど怖い症状なのです。
高血圧の多くが、日頃の生活習慣に起因するもの。だからこそ、毎日測る血圧値を気にすることは、生活習慣を見直すきっかけになるのです。高血圧の一因といわれる塩分の摂取過多や運動不足など、血圧値を知ることで改善することもできれば、ほかの生活習慣病の予防にも役立ちます。
何よりも、健康維持への意識が、血圧の数値を知ることで高まるのではないでしょうか。
7.血圧の管理がむずかしい? 通院する時間がない? それを解消するオンライン診療
実は高血圧のケアは、通院不要でできるということ、ご存じでしたか?
健康診断等で血圧が高めだといわれれば、医療機関を受診することが多いと思いますが、医療機関を受診すれば、おおむね1ヵ月に1回は通院の必要性が生じます。忙しい中で都合をつけて受診し、薬を処方されれば、また薬局で待つ必要性も出てきます。病院に行っても血圧を測るだけで、しかもそれば家で測るよりも精度が低いなら、通院の必要性は?
また、これといった自覚症状もないので、通院の面倒くささから、いつの間にか行かなくなるケースは多々あります。とはいえ、毎日家で血圧を測っても、その評価管理や治療もむずかしい…。
高血圧は、脳心血管疾患の要因になる怖い症状。では、どのようにコントロールすればいいのでしょうか。
その解決策のひとつが、オンライン診療なのです。
たとえば、持病の管理でも、血糖値が判断材料になる糖尿病は、採血による検査が必要。でも高血圧では、家庭で測定した日々の血圧値が医師の判断材料の要になるのです。つまり、高血圧ケアはオンライン診療の特性にフィットしたものなのです。高血圧イーメディカルは、血圧ケアに特化したオンライン診療サービスを実施しています。
毎日の血圧ケアも、家庭で測定した血圧値をBluetooth通信機能で自動的に転送して管理。それを専門家が、毎日モニタリングしています。自分では気づきにくい、ちょっとした変化も専門家が見ることで、的確なアドバイスをすることが可能です。
家庭での血圧測定で得た数値とオンラインの診療に基づき、投薬が必要な場合には、処方した薬をご自宅までお届けします。せっかく測った血圧値のデータを、より有効に活用。また、通院にかかる時間を省くことで、自分の時間も有効に活用することができます。
血圧ケアの最先端は、オンライン。多忙な毎日のなかで、血圧ケアの通院が面倒になって、いつの間にかやめてしまうよりも、測った数値を健康管理に有効に活かせるのであれば何よりではないでしょうか。
ご興味を持たれた方は、是非無料で医師にご相談ください。
8.まとめ
血圧ケアに欠かせないもの。それが血圧測定です。
自分の生活習慣を見直すにも、医師が適切な治療法を判断するにも、血圧測定で得た数値が重要なカギになります。そして、そのデータのベースとなるのが、家庭で測った血圧値なのです。
日本人の死因の上位を占める脳梗塞や心筋梗塞。その要因となるのが高血圧です。血圧が高いことが分かっても、きちんと血圧ケアをすれば、深刻な病気を予防でき、血圧値の改善もできます。
一見すると、医療機関での測定値のほうが正確だと思いがちですが、ちょっとした測定環境の違いに左右される血圧の数値は、家で測るほうが信頼度としては高いのです。
家庭での血圧測定で知れることは、本当に治療が必要な高血圧かどうかということ。医療機関で測ると高いのに、家では基準値内を維持しているのであれば、投薬治療をしていても、医師が減薬や休薬の判断をくだすこともあります。逆に、医療機関では基準値内なのに、家では高い数値を示していれば、それに合った治療を開始・追加することができます。
家でも、
1)静かで過ごしやすい部屋で測る
2)椅子に座ってリラックスして測る
3)いつも同じ腕で測る
4)朝晩2回同じタイミングではかる
というポイントを守れば、正確な血圧値を知ることが可能です。
より正確さを重視するなら、さまざまなタイプがある家庭用血圧計でも「上腕式血圧計」を選ぶこと。測った数値は記録すること。管理や通院が面倒で続かなさそうなら、オンライン診療を活用できるのも高血圧ケアならではのメリット。
血圧を測って、その数値が高いか低いかを知るだけでも、健康管理には役立ちます。さらに、それが医師の的確な判断材料になり、血圧ケアにつながるのであれば、正しい測り方で、きちんと管理したほうがいいと思いませんか。
ぜひ、家庭で測った血圧値が教えてくれる調子を重要視して、その数値を健康維持に役立てましょう。