医師監修|高血圧の診断基準が2024年4月に変更になったのは本当?今後の治療はどうなるの?

監修者

【監修】谷田部 淳一

チーフメディカルディレクター・ 医師・医学博士

「高血圧の診断基準が140/90 mmHg以上から160/100 mmHg以上に変更になったと聞いたけど本当?」
「血圧が160/100 mmHg未満なら治療しなくてもいいの?」

このような疑問の声がSNSを中心に多く挙げられています。混乱の原因は、全国健康保険協会(協会けんぽ)が送っている受診勧奨のメッセージ内容が2024年4月に変更になったことがきっかけです。

このメッセージ内容が誤った解釈で拡散されてしまい、多くの誤解を招くことになりました。今回は、高血圧の診断基準が本当に変更されたのか、今後の治療はどのように行われていくのかについて詳しく解説します。

1.高血圧の診断基準は変わっていない


結論から言うと、高血圧の診断基準は2024年4月以降もそれ以前も変わっていません。診断基準が変更になったといわれているのは、完全に誤解です。

1-1.「高血圧治療ガイドライン2019」での診断基準

「高血圧治療ガイドライン2019」とは、日本高血圧学会が発行している高血圧の治療方針を決めるのに必要なガイドラインのことです。このガイドラインでは、高血圧の診断基準が以下のように定められています。

 

診察室血圧(mmHg)

家庭血圧(mmHg)

度高血圧

140~159かつ/または90~99

135~144かつ/または85~89

度高血圧

160~179かつ/または100~109

145~159かつ/または90~99

度高血圧

180以上かつ/または110以上

160以上かつ/、または100以上

高血圧は、Ⅰ度高血圧からⅢ度高血圧まで分類されています。診察室血圧が140/90 mmHg以上、家庭血圧が135/85 mmHg以上の場合は高血圧です。

1-2.厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」(令和6年度版)でも診断基準は変更なし

厚生労働省が公表している「標準的な健診・保健指導プログラム」は、健診や保健指導を効果的かつ効率的に行うための資料です。令和6年(2024年)度版のこちらの資料では、血圧の値に応じて次のような対応を対象者へ促すように記載がされています。

健診判定

対応

肥満者の場合

非肥満者の場合

160/100 mmHg以上

すぐに医療機関を受診する

収縮期血圧が140 mmHg以上160mmHg未満、または拡張期血圧が90以上100 mmHg未満

生活習慣を改善する努力をしたうえで、数値が改善しないなら医療機関を受診する

収縮期血圧が130 mmHg以上140mmHg未満、または拡張期血圧が85以上90 mmHg未満

特定保健指導を積極的に活用し生活習慣を改善する

生活習慣を改善する

130/85 mmHg未満

今後も継続して健診受診をする

血圧が140/90 mmHg以上の場合は心血管疾患リスクが上昇するため、生活習慣の改善や医療機関の受診が必要です。160/100 mmHg以上の場合は、すぐに医療機関を受診するようにとなっています。

1-3.全国健康保険協会(協会けんぽ)が受診勧奨のお手紙を送る基準も変更なし

全国健康保険協会では、生活習慣病予防健診を受診した方や、健診受診後に医療機関への受診が確認できなかった方などを対象に医療機関の受診を促す案内を送っています。受診勧奨の案内を送る基準も以前から変更はされていません。

〈2024年度の受診勧奨基準値〉

収縮期血圧

拡張期血圧

160 mmHg以上

100 mmHg以上

参考:協会けんぽGUIDE BOOK 2024年4月版

〈2023年度の受診勧奨基準値〉

収縮期血圧

拡張期血圧

160 mmHg以上

100 mmHg以上

参考:協会けんぽGUIDE BOOK 2023年版

〈2020年度の受診勧奨基準値〉

収縮期血圧

拡張期血圧

160 mmHg以上

100 mmHg以上

参考:協会けんぽGUIDE BOOK 2020版

なお、収縮期血圧が160 mmHg以上、拡張期血圧が100 mmHg以上というのはあくまで受診勧奨を強力に推進基準であり、高血圧の診断基準とは別物です。

2.なぜ高血圧の診断基準が変更になったといわれているのか


高血圧の診断基準は以前から変わっていません。にもかかわらず、2024年4月から基準が変更になったという話が拡散されています。

2-1.特定健診で「受診勧奨となる血圧の値」と「高血圧の診断基準」が混同されている

高血圧の診断基準が変更になったと騒がれているのは、「受診勧奨となる血圧の値」と「高血圧の診断基準」が混同されているのが原因の一つとして挙げられるでしょう。

全国健康保険協会では、健診での血圧が160/100 mmHg以上で要治療と判定されながら医療機関を受診していない治療放置者に対して受診勧奨の案内を送っています。この「160/100 mmHg以上」という数字は、あくまでも案内を送る基準となるものです。高血圧の診断基準は別にあります。

日本高血圧学会では、診察室血圧が140/90 mmHg以上の場合を高血圧としています。全国健康保険協会では、注意喚起の基準値をより厳しく、高値血圧(130/85 mmHg)未満に設定しています。

健診を受けたときに受診勧奨の案内がくる血圧の値と高血圧の診断基準が混同され、「高血圧の基準が変更になった」といわれている可能性もあるでしょう。

2-2.「高血圧の診断基準」が変更になったと誤った情報が拡散されている

高血圧の診断基準は2024年4月以降もこれまでとまったく同じです。しかし、診断基準が変更になったという誤った情報をネット記事にあげたりSNSで投稿したりしている方が散見されます。このような情報が広がってしまい、誤った認識をもった方が増えてしまっています。

2-3.日本高血圧学会も誤った情報が流れていると注意喚起している

高血圧の診断基準が変更になったという話が広まっている件について、日本高血圧学会も「特定健診の第4期(令和6年度)から用いられている血圧の受診勧奨判定値につい
て、一部で基準が変ったという誤解が広まっています。」と注意喚起を行っています。

また日本高血圧学会でも、受診勧奨の基準となる160/100 mmHg以上という数値だけが強調されてしまった結果、今回の誤解が広まってしまったのではないかと考えているようです。

参考:日本高血圧学会 特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を

3.今後も高血圧の治療方針は変わらない


高血圧の治療方針についても、とくに変更はありません。これまでと同じように治療が行われていきます。「160/100 mmHg未満だから治療が必要ない」ということは決してありません。正常血圧の120/80 mmHgを超えて血圧が上昇すればするほど、さまざまな合併症のリスクが増えていきます。

3-1.初診時の血圧レベルに応じた治療方針

「高血圧治療ガイドライン2019」では、以下のように初診時の血圧に合わせた治療計画を作成しています。


参考:高血圧治療ガイドライン2019

3-2.降圧目標は年齢やリスクで異なる

降圧目標は、必ずしも一定ではありません。年齢やもっているリスクによってどこまで血圧を下げるべきかが違ってきます。

 

診察室血圧

家庭血圧

・75歳未満の成人
・脳血管障害患者(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)
・冠動脈疾患患者
・CKD患者(蛋白尿陽性)
・糖尿病患者
・抗血栓薬服用中

130/80 mmHg未満

125/75 mmHg未満

・75歳以上の高齢者
・脳血管障害患者(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)
・CKD患者(蛋白尿陰性)

140/90 mmHg未満

135/85 mmHg未満

 

4.高血圧を放置すると動脈硬化が進行して疾患リスクが高まる


高血圧(140/90 mmHg以上)を放置しておくと、動脈硬化が進行して命に関わる病気を招く恐れがあります。血圧を指摘された場合は、必ず医療機関を受診しましょう。

4-1.狭心症

狭心症は、心臓に血液を送っている冠動脈が細くなって血液が流れにくくなった状態です。冠動脈が細くなる原因の多くは動脈硬化だといわれています。息切れや胸の痛みなどが代表的な症状です。

4-2.心筋梗塞

冠動脈が完全に詰まった状態を心筋梗塞といいます。胸部を強く締め付けられるような感じや圧迫感が続くことが特徴です。呼吸困難や意識障害、吐き気を伴うこともあります。心筋が壊死した範囲によっては、死に至ることもある病気です。

一命をとりとめても、後遺症として心不全を発症し、少し歩くだけで息切れがするなど、日常的な生活活動に支障を生じたりすることもあります。

4-3.脳出血

脳出血の多くは高血圧が原因だといわれています。脳内にある細い動脈が破れると脳出血を起こし、片麻痺や意識障害などを起こすことがあるため注意が必要です。

4-4.脳梗塞

脳の血管が詰まって神経細胞が死んでしまう状態を脳梗塞といいます。死んだ神経細胞は元に戻りません。運動麻痺や感覚障害、言語障害などが起こる可能性があります。

5.血圧が少しでも気になるなら「イーメディカル」を活用しよう

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5-1.保険適用でオンライン診療を受けられる

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5-2.血圧計が無料で貸与される

イーメディカルを契約いただいた方には、無料でオムロン製の血圧計を貸与しています。計測した血圧は専用のアプリを通して医師にリアルタイムで共有されるため、万が一の場合も安心です。

5-3.専門チームにいつでも相談できる

高血圧に対する専門知識をもった医師や看護師にいつでもチャットで相談できます。「いつもより血圧が高いけど大丈夫?」「生活習慣に関するアドバイスが欲しい」など、気になることはいつでもご相談ください。

6.まとめ


高血圧の診断基準が2024年4月に変更になったという話が広がっていますが、こちらは誤りです。診断基準は一切変わっていません。従来通り、高血圧の基準は診察室血圧の場合は140/90 mmHg以上です。健診で高血圧を指摘された方は、早めに医療機関を受診しましょう。

高血圧を放置しておくと動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を招くことがあります。血圧に関して何か不安や疑問点がある方は、イーメディカルへお気軽にご相談ください。

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