建設業の高所作業における血圧制限について 従業員の高血圧管理の方法5選を解説

監修者

【監修】谷田部 淳一

チーフメディカルディレクター・ 医師・医学博士

建設業の高所作業は最も広く行われている危険業務です。高所からの転落というと、足場や屋根を思い浮かべますが、発生頻度が一番多いのは、はしごや脚立を使っての作業中であり、日常生活でも行われる身近な問題と言えます。

高所作業において事故を防止するためには、適切に作業を行うことはもちろんのこと、作業者の健康状態を考慮することが非常に重要です。高血圧は、成人の2人に1人で発生する頻度の高い疾患です。

高所作業に従事するまたは従事させる際に、法的な血圧制限はありません。しかし、企業側には、従業員の血圧値を考慮して必要な場合には就業制限をかける義務があります。

高血圧は進行すると、めまいやふらつきといった症状が現れることがあり、高所作業での転落・墜落リスクを高めるため特に注意が必要です。

本記事では、建設業の高所作業における血圧制限をはじめとして、以下について解説します。

● 高所作業中に高血圧が引き起こす事故のリスク
● 制限をかけるべき高所作業の内容
● 従業員の高血圧管理の方法5選
● 高所作業中における血圧低下による事故のリスク
● 建設業におけるグリーンサイトについて
● 建設業が実際に行っている従業員の血圧管理の方法

実際にどのように従業員の高血圧を管理すれば良いのかを具体的に解説しています。従業員の高血圧管理についてお悩みの事業者様は参考にしてください。

「忙しくて通院できない」という従業員には、オンライン診療の活用を案内する方法もあります。スマートフォンで診察を受けられるため、通院の手間が省け、治療を継続しやすいメリットがあります。

なお、当社「イーメディカルジャパン」では、高血圧に特化したオンライン診療サービス「高血圧イーメディカル」を提供しています。

イーメディカルのオンライン診療サービスについて詳しく知りたい事業者様は、以下を参考にしてください。

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1.建設業の高所作業における血圧制限について

建設業の高所作業において法的な血圧制限はありません。しかし、労働安全衛生法において以下のように定められています。

● 健康診断の結果、従業員に異常所見があった場合、医師等に意見を聞く必要がある
● 医師等の意見を聞いたのちに、就業場所や作業の変更など、必要な就業制限をかけなければならない
● 従業員の健康状態に配慮して従事する作業を適切に管理する義務がある

これらの法的な根拠もあり、従業員の高血圧および健康状態を適切に把握して、従業員が安全に従事できるよう努める必要があります。

出典:デジタル庁 労働安全衛生法

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2.建設業の高所作業中に高血圧が引き起こす事故のリスク

高所作業中に高血圧の症状が現れた場合、転落・墜落につながるリスクがあります。

そのため、事前に以下のような症状が現れていないか確認する必要があります。

● めまい
● ふらつき
● 頭痛
● 動悸
● 眠気

特に眠気に関して、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧の間には深い関連があることが知られています。

SASを疑う症状として以下の4つが挙げられ、高血圧も含まれています。

1. いびき
2. 昼間の疲労感・倦怠感・眠気
3. 睡眠中に息が止まっていると言われたことがある
4. 高血圧

また、SASは突然の眠気を催し、運転や機械作業中の事故を増やすことが分かっています。高血圧の方のおよそ50%にSASが合併しているとも言われるため、高血圧リスクへの対応は、SASリスクへの対応にもつながります。

朝礼時や現場への入場前に、管理者が中心となって作業員の体調や上記のような症状を確認する習慣を設けることが望まれます。

3.高血圧の方に制限をかけるべき高所作業の内容

高血圧の方に制限をかけるべき高所作業の内容の一例は以下の通りです。

● 足場や脚立、ローリング、高所作業車を使用した作業
● 仮設構造物上での作業
● 足場の組立や解体作業
● 高所への上り下りが多い作業
● 身を乗り出すような作業

高所作業そのもののストレスはもちろん、高温多湿の環境や炎天下での作業、重量物の運搬作業は、血圧の急激な変動を招くリスクがあります。これらの作業においても、高血圧の方を従事させる場合は、産業医等の意見を踏まえたうえで、適切な就業制限を検討する必要があります。

4.建設業における従業員の高血圧管理の方法5選

建設業における従業員の高血圧管理の方法として、主に以下の5つが挙げられます。

● 従業員に受診を丁寧に促す
● 朝礼時・入場前に血圧を測定する
● 従業員に高血圧のリスクを知ってもらう
● 高血圧の方を見える化する
● オンライン診療の導入を検討する

それぞれについて詳しく解説します。

4-1.従業員に受診を丁寧に促す

健康診断後、従業員に受診を促すことは特に重要です。動脈硬化の重症度や合併症リスクなどを詳しく把握できないためです。医療機関で精密検査を受けて、適切な生活指導や治療を受けなければなりません。

従業員に受診を促すには以下のようなポイントがあります。

● 産業医や保健師と連携して受診の必要性を丁寧に説明してもらう
● 就業時間内に受診できるようにする
● 受診のための特別休暇を与える
● 受診費用の補助制度を設ける

高血圧は放置すると、体のあらゆる箇所の血管で動脈硬化が進行します。動脈硬化が進行すると、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などのリスクも高まってしまいます。血圧等に異常所見の指摘があった従業員には、再受診を促しましょう。

4-2.朝礼時・入場前に血圧を測定する

朝礼時や作業場への入場前などに血圧測定をするのは有効です。「血圧の結果により高所作業の制限をする」などの適切な配置を検討できるためです。

血圧測定を習慣化するために以下のように環境を整えましょう。

● 共有スペースに自動血圧計を設置する
● 社内メールや朝礼で血圧測定の開始と重要性を周知する
● 血圧値早見表(血圧値の分類)の掲示する
● 測定記録表(血圧手帳)を配布する
● 家庭での血圧測定を促す

血圧値だけでなく、前述しためまいやふらつきなどの症状の有無を確認することも重要です。管理職が率先して血圧測定を行い、社内全体で健康意識を高めましょう。

4-3.従業員に高血圧のリスクを知ってもらう

高血圧は自覚症状がないまま進行することが多く、従業員自身が治療の必要性を認識していないケースも少なくありません。放置した場合にどのような症状や病気につながるかを企業側が従業員に周知することも重要です。

特に建設作業中にめまいやふらつきなどの高血圧の症状が現れると、転落・墜落が起きるリスクがあることを知ってもらわなければなりません。

これらのリスクを知ってもらうために、以下のような対策を行いましょう。

● 産業医等による健康に関する研修の実施
● 高血圧を放置するリスクの掲示
● 建設業における高血圧リスクの掲示
● 高血圧を招く生活習慣の掲示
● 家庭血圧の重要性の掲示

掲示物において、ただ社内に掲示するだけでは不十分です。定期的に朝礼や社内メールで周知するのが重要です。

4-4.高血圧の方を「見える化」する

高血圧を持つ従業員の存在を現場内で適切に「見える化」することも管理方法の一つです。本人だけでなく周囲の現場監督や同僚も把握していなければ、誤って危険な作業に就かせてしまうリスクがあるためです。

「見える化」する工夫として、高血圧の従業員に対し以下のような目印をつけ、高所作業を禁止する方法があります。

● ヘルメットの名前を黄色テープにする
● ヘルメットに緑の防暑たれを着用する

視覚的に共有して周囲が即座に判断できるようにすれば、誤って高所作業に就かせてしまうリスクを下げることができます。「見える化」の仕組みを現場に根付かせることで、現場監督や従業員が一体となって高血圧リスクを管理できる体制を整えられます。

ただし、これらは個人の機微な情報に該当します。導入にあたっては必ず本人の同意を得たうえで、差別的な扱いにつながることのないよう、あくまでも安全を守るための措置であることを関係者全員に周知徹底してください。

4-5.オンライン診療の導入を検討する

従業員のなかには、仕事の都合や体力的な負担から、定期的な通院の継続が難しい方もいます。オンライン診療を活用すれば、パソコンやスマートフォンから診察を受けられるため、通院の負担を軽減しながら治療を継続しやすい環境を整えられます。

当社が提供している「高血圧イーメディカル」は、高血圧の管理に特化したオンライン診療サービスです。

主な特徴は以下の通りです。

● 家庭血圧の記録をアプリで管理し医療チームと共有できる
● 診察から処方までオンラインで完結するため治療を継続しやすい
● 処方薬を自宅へ郵送できるため薬局に出向く必要がない
● 土日祝を含む6時〜23時まで、好きな時間に受診できる
● 脂質異常症や高尿酸血症(痛風)、花粉症などにも対応している
● 専用アプリから体調や病状について、専門チームに相談できる

高血圧は、自覚症状が現れる前から治療を始めるのが重要です。「高血圧イーメディカル」を従業員の健康管理ツールとして導入し、治療の継続をサポートする体制づくりにお役立てください。

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5.建設業の高所作業中における血圧低下による事故のリスク

高血圧関連の労災では、高血圧そのものと同程度かそれ以上に、降圧薬による血圧の下がりすぎが事故の引き金となるケースがあります。高所作業中に血圧低下の症状であるめまいや立ちくらみが生じれば、転落・墜落の事故につながることがあるためです。

こうした事故を防ぐには、家庭での血圧測定を習慣化して日常生活中の血圧に即した治療を受けなければなりません。医療機関で測られる血圧を診察室血圧と呼びます。診察室血圧は、真の血圧よりも緊張により血圧が高く出やすい傾向です。

これを「白衣効果」と呼び、白衣効果を伴った診察血圧だけをみて、降圧薬が必要以上に増量されると、普段の生活では血圧が下がりすぎてしまうことがあります。このような事情もあり、現在では診察室血圧と家庭血圧の間に差がある時には、家庭血圧を優先して判断することが推奨されています。

また、血圧の低下を予防するためには、現場レベルでも以下のような対策を習慣化することが重要です。

● 暑熱環境でのこまめな体調確認
● 水分補給による脱水予防
● 重量物運搬の制限
● 食後の休憩確保

イーメディカルで行われているように家庭血圧に基づいた診療を受けることが肝要であり、無治療のリスクと治療に伴うリスクをともに低減することにつながると考えられます。

6.【事例】建設業が実際に行っている従業員の血圧管理の方法

建設業が実際に行っている従業員の血圧管理の方法として、以下が挙げられます。

● 朝礼時に片足立ちを行い、従業員にふらつきがないか確認する
● 朝礼後に管理職が中心となって従業員の体調確認を行い、体調に応じた適正配置を実施する
● 新規入場時は、従業員の年齢、最新の健康診断日、健康状態を確認する
● 入場時に血圧測定を行い、測定結果に応じた適正配置の実施する
● 2m以上の足場における高所作業を禁止する
● グリーンサイトにて安全書類を提出する
● 産業医と契約して適宜健康相談ができる体制を整える

血圧の数値だけで一律に就業を禁止するのは難しいですが、上記のような仕組みを整備することで、個々の健康状態に応じた適正配置が可能になります。

7.建設業におけるグリーンサイト

グリーンサイトとは、グリーンファイル(安全衛生管理の書類)をインターネット上で作成・提出・管理できる業界標準のクラウドサービスです。

元請会社・協力会社の双方が利用でき、紙の書類をやり取りする手間やコストを大幅に削減できることから、スーパーゼネコンから中小の建設業者まで幅広く導入されています。

血圧管理の観点からは、適正配置通知書(血圧)という書類があり、記載する主な内容は以下の通りです。

● 氏名
● 年齢
● 血圧値
● 通院の有無
● 服薬の有無
● 考慮すべき作業

元請会社・協力会社の双方で、適正配置を管理できるため、手間やコストの削減だけでなく、現場の安全水準を高めることにもつながります。

8.建設業の高所作業における血圧制限に関するよくある質問

建設業の高所作業における血圧制限に関するよくある質問として、以下が挙げられます。

● 低血圧において作業の制限はある?
● 高齢者の禁止作業はある?

それぞれについて解説します。

8-1.低血圧において作業の制限はある?

低血圧は通常、健康に影響を及ぼしません。そのため、血圧が低いだけで作業の制限は不要です。しかしまれに、めまいや立ちくらみ、ふらつきなどの症状が伴う低血圧の場合には、精密検査が行われます。

その結果、貧血や内分泌疾患、神経疾患などに伴う二次性低血圧症や起立性低血圧症、原因の特定ができなくても本態性低血圧症などと診断された場合、高所作業では転落・墜落のリスクがあります。そのため、産業医等に意見を聴取し必要に応じて、作業の制限をしなければなりません。

8-2.高齢者の禁止作業はある?

高齢者の年齢だけを理由に法律で禁止されている作業はありません。しかし、労働災害は高齢者に多いことも事実です。企業には従業員の健康状態を考慮したうえで、高所作業や重量物の運搬、危険作業などを必要に応じて制限する義務があります。

9.通院が難しいときはオンライン診療の選択肢もある

建設業の高所作業において、法律で定められた具体的な血圧制限はありません。しかし、健康診断で異常所見が認められた場合、企業は産業医等の意見を聴取し、就業制限を検討する義務があります。

高血圧が進行するとめまいやふらつきが生じることがあり、高所作業中にこれらの症状が現れた場合、転落・墜落につながるリスクがあります。また、高血圧を放置すると動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすおそれもあるため、企業として従業員に二次検診の受診を促すことが重要です。

受診をためらう従業員に対しては、産業医等と連携しながら受診の必要性を丁寧に伝えることが大切です。通院が難しい従業員には、スマートフォンで診療が完結するオンライン診療の活用を案内する方法もあります。

治療を継続しやすい環境を整えることが、従業員の健康管理と労災リスクの低減につながります。従業員の健康促進の取り組みを始めたい事業者様は「高血圧イーメディカル」の導入をご検討してください。

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