
建設業は各業種の中でも熱中症による死傷者数が多く、過去5年間(2020〜2024年)の集計でも全体の約20%を占めています。熱中症は屋外の直射日光下だけでなく、密閉された倉庫内や重機・車両の内部でも発生するため、作業環境に応じた体系的な対策が必要です。
こまめな暑さ指数(WBGT)の実測や休憩場所の整備などは、すでに多くの企業が実施しています。しかし、「高血圧」などの生活習慣病を放置している作業員がいる場合、それらの基本対策だけでは命を守りきれない可能性があります。 事故を防ぐには、病状に応じた個別対応を現場管理の仕組みとして組み込むことが重要です。
本記事では、建設現場の基本的な6つの熱中症対策や、高血圧と熱中症リスクの関係性、発生時の対応について詳しく解説します。なお、高血圧などの持病を持つ作業員には、当社「イーメディカルジャパン」のオンライン診療サービス「高血圧イーメディカル」の活用も選択肢の一つです。詳しく知りたい事業者様は、以下をご参照ください。
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目次
1.高血圧と熱中症リスクの関係性について

生活習慣病などの持病を抱える作業員は、健康な方と比べて熱中症のリスクが高く、重症化しやすいという特徴があります。
例えば、高血圧の方は以下のような理由により熱中症リスクが高まります。
理由 | メカニズム |
脱水による血圧の乱高下 | 水分不足で血液が濃縮すると、低血圧だけでなく極端な高血圧にもなりやすく救急対応のリスクが高まる |
体温調節がうまくいかない | 血管の柔軟性が低下しているため、暑い時に血管を広げて熱を逃がす「放熱」や「発汗」がスムーズにできない |
熱中症が重症化しやすい | 脳浮腫、血管内凝固、腎不全といった生命を脅かす重篤な合併症を引き起こすリスクが健常者よりも高い |
高齢になるにつれて高血圧を持つ作業員の割合が増加します。通常の熱中症対策に加えて、高血圧の方への個別対応を現場管理の仕組みに組み込んでおくことが、事故を防ぐうえで重要です。
以下では、高血圧がある作業員への具体的な対策を解説します。
1-1.産業医から意見をもらう
高血圧などの持病を持つ作業員の就業管理を行ううえで、まず産業医への相談が基本的な対応となります。
厚生労働省の指針では、高血圧・糖尿病・心疾患・腎不全などの慢性疾患を有する作業員については、産業医から意見を聴取したうえで適切な就業場所や作業内容を検討することが求められています。
1-2.降圧剤の服用の有無を把握する
降圧剤(血圧を下げる薬)の服用の有無を把握することは、高血圧のある作業員の熱中症リスクを下げるために重要です。降圧剤の中には、尿量を増やして血圧を下げる利尿薬が含まれるものがあります。排尿量が増えることで体内の水分が失われやすくなり、脱水が進みやすい状態になります。
その結果、同じ環境下で作業していても、降圧剤を服用していない作業員と比べて熱中症を発症するリスクが高まってしまうのです。事前に当該作業員が主治医に水分補給の量や方法を確認する必要があります。
1-3.水分と塩分摂取の方法を確認しておく
高血圧の方の多くは、医師から塩分制限の指示を受けています。このため、熱中症予防として必要な「塩分補給」との間で、どのように対応すべきか迷うケースが生じます。高血圧の方は基本的には夏であっても、適切な減塩を続けることが原則とされており、1日6グラム未満の塩分摂取が望まれます。
ただし、発汗が多い場合は、水分とともに少量の塩分(スポーツドリンクや経口補水液)の補給を勧められています。具体的な摂取方法は個人の病状によって異なるため、当該作業員が医師に相談し、現場での塩分補給の方法を確認しておく必要があります。
なお、スポーツドリンクには糖分が多く含まれているものもあるため、糖尿病などを併発している場合は飲料の選択にも注意が必要です。
1-4.オンライン診療を導入する方法もある
建設現場の作業員のなかには、工期中の多忙や体力的な疲労から、定期的な通院の継続が難しい方もいます。オンライン診療を活用すれば、パソコンやスマートフォンから診察を受けられるため、通院の負担を軽減しながら治療を継続しやすい環境を整えられます。
「高血圧イーメディカル」は、高血圧の管理に特化したオンライン診療サービスです。
主な特徴は以下の通りです。
● 家庭血圧の記録をアプリで管理し医療チームと共有できる
● 診察から処方までオンラインで完結するため治療を継続しやすい
● 処方薬を自宅へ郵送できるため薬局に出向く必要がない
● 土日祝を含む6時〜23時まで、好きな時間に受診できる
● 脂質異常症や高尿酸血症(痛風)、花粉症などにも対応している
● 専用アプリから体調や病状について、専門チームに相談できる
高血圧は、自覚症状が現れる前から治療を始めることが重要です。万が一、熱中症による重症化や死亡事故が発生した場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求を受けるリスクや、現場の稼働停止、企業ブランドの低下につながる可能性があります。
「高血圧イーメディカル」を従業員の健康管理ツールとして導入することは、「持病である高血圧の管理まで会社としてサポートしている」という安全配慮の証明にもなります。従業員の治療継続を支える体制づくりに、ぜひお役立てください。
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2.建設現場の基本的な6つの熱中症対策

建設現場の基本的な熱中症対策として、以下の6つが挙げられます。
- 暑さ指数(WBGT)を確認する
- 日常的に従業員の健康管理を行う
- 作業服などの備品を充実させる
- 建設現場と休憩施設の環境を改善する
- こまめに水分補給をするルールを作る
- 尿による脱水チェック表をトイレに掲示する
それぞれの詳細を解説します。
2-1.暑さ指数(WBGT)を確認する
現場における熱中症対策の起点となるのが、暑さ指数の確認です。WBGTは気温・湿度・輻射熱(太陽や地面からの熱)を総合的に評価した指標です。
WBGTが28以上になると熱中症患者数が著しく増加するというデータがあり、この数値を基準として作業の継続可否や休憩のタイミングを判断することが求められます。
WBGTと現場での作業の目安は以下のWBGT値と運動指針を参考にしてください。
暑さ指数(WBGT) | 運動指針 | 対応の目安 |
31以上 | 運動は原則中止 | 特別な場合以外は作業中止を検討 |
28以上31未満 | 厳重警戒(激しい運動は中止) | 10〜20分おきに休憩と水分・塩分補給 |
25以上28未満 | 警戒(積極的に休憩) | 30分おきに休憩と水分補給、熱中症兆候に注意 |
21以上25未満 | 注意(積極的に水分補給) | 作業の合間に積極的に水分補給 |
21未満 | ほぼ安全 | 適宜水分補給を実施 |
熱中症のリスクは、気温よりも湿度や直射日光の有無によって大きく左右されます。そのため熱中症対策では、気温だけでなく湿度や輻射熱も含めて総合的に評価するWBGTを指針にすることが推奨されます。
WBGTの測定には携帯型の測定器が広く活用されており、作業箇所ごとに設置が求められます。
2-2.日常的に従業員の健康管理を行う
熱中症を防ぐためには、現場での対策だけでなく、日頃からの健康状態の把握が重要です。
以下のような日常的な健康管理の取り組みを取り入れましょう。
取り組み | 内容 |
熱中症チェックシートの活用 | チェックシートにより毎日の体調を自己申告できるようにする |
声かけによる個人確認 | 「顔色」「表情」「言動」の変化を朝礼時に確認する |
特に体が暑さに順応しておらず、湿度も高い梅雨明けなどは、きめ細かい健康管理が必要です。また、基礎疾患のある作業員は、熱中症にかかりやすく重症化のリスクがあります。
個別の人員配置についても医師の意見を参考に検討することが求められます。
2-3.作業服などの備品を充実させる
適切な服装と備品の整備は、体への熱の負担を軽減する効果が期待できます。
例えば、以下のような備品があります。
備品の種類 | 特徴・効果 |
ファン付き作業服 | 服内に外気を送り込み気化熱で体を冷却する |
メッシュ素材のビブス | 通気性が高く、体の熱を外に逃がしやすい |
保冷剤入り日よけ付きヘルメット | 直射日光を遮り、頭部の温度上昇を抑える |
特にファン付き作業服は、近年の建設現場で急速に普及しています。
2-4.建設現場と休憩施設の環境を改善する
作業環境と休憩施設の両方を整備することで、熱中症の発生リスクを体系的に下げることができます。
場所 | 対策の種類 | 具体的な設置内容 |
作業現場 | 冷却設備 | 大型扇風機、スポットクーラー |
日陰確保 | 遮光ネット、タープ型テント | |
休憩所 | 熱中症対策用品を常備した簡易休憩所 | |
休憩施設 | 冷房設備 | クーラーや扇風機 |
冷却設備 | 冷蔵庫や製氷機 | |
塩分・水分補給 | 経口補水液や塩分を含んだ飴などの常備 |
2-5.こまめに水分補給をするルールを作る
水分補給は作業員任せにするのではなく、現場全体のルールとして組み込むことが熱中症予防において重要です。暑い時期に必要な水分補給の目安は、作業強度によって異なります。
しかし、多量の発汗を伴う作業場において、特にWBGT値が警戒を超える場合などには、以下を参考に水分と塩分を補給する必要があります。
塩分濃度 | 0.1〜0.2%の食塩水、またはナトリウムを40〜80mg/100ml含むスポーツドリンクや経口補水液 |
水分補給のペース | 20〜30分おきにコップ1〜2杯程度摂取 |
過酷な暑熱環境での仕事に従事する際や、マラソンなど強度の強い運動をする際には、水やお茶だけを大量に補給すると、体内の塩分(ナトリウム)濃度が薄まり、まれに低ナトリウム血症(血液中のナトリウムが異常に低くなる状態)を引き起こすリスクがあります。このため、塩分と水分を同時に補給できるスポーツドリンクや経口補水液の活用を推奨します。
なお、労働安全衛生規則第617条では、多量の発汗を伴う作業場において塩分と飲料水を備え付けることが事業者の義務として定めており、作業員任せにするのは法令違反にあたります。
2-6.尿による脱水チェック表をトイレに掲示する
尿の色は脱水状態を示す簡易指標として有効です。各自がトイレに立ち寄るたびに確認できるように、以下のような脱水チェック表を掲示することをおすすめします。
尿の色 | 対応 |
| ・問題なし ・普段通りに水分を摂る |
・問題なし ・コップ1杯の水分を摂る | |
| ・1時間以内に250mlの水分を摂る ・「屋外にいる」または「汗をかいている」場合は、500mlの水分を摂る |
| ・今すぐ250mlの水分を摂る ・「屋外にいる」または「汗をかいている」場合は、500mlの水分を摂る |
| ・今すぐ1000mlの水分を摂る ・この色よりも濃い色、または赤や茶色混じっている場合は速やかに病院へ行く |
3.建設現場で熱中症が発生した際の対応方法

熱中症は、初動対応のスピードと適切な判断が重症化を防ぐうえで重要です。
対応は以下の順序で進めます。
- 症状を確認する
- 作業から離脱して体を冷やす
- 意識の状態を確認する
- 水分摂取ができるかを確認するそれぞれの手順を詳しく解説します。
それぞれの手順を詳しく解説します。
3-1.症状を確認する
熱中症が疑われる作業員を発見した際は、まずは他覚症状(第三者が見て確認できる症状)と自覚症状(本人が訴える症状)の両方を確認します。
確認すべき主な症状は以下の通りです。
| 具体的な症状 |
他覚症状 | ふらつき、生あくび、失神、大量の発汗、けいれん、体の熱さなど |
自覚症状 | めまい、筋肉の痛み、こむら返り(筋肉がつる状態)、頭痛、不快感、吐き気、だるさ、体の熱さなど |
3-2.作業から離脱して体を冷やす
症状が確認された場合は、ただちに作業を中断させ涼しい場所(日陰・クーラーが効いた休憩室など)へ移動させます。
その後、できるだけ速やかに体を冷却します。
身体冷却の方法は以下の通りです。
方法 | 手順 |
濡れタオルによる冷却 | 濡れたタオルを体に当て扇風機で風を送る |
重点冷却 | 脇の下・両側の首筋・足の付け根(太い血管が通る部位)を集中的に冷やす |
急速冷却 | 作業着を脱がせ水をかけて全身を冷やす |
冷却は早いほど重症化を防ぐ効果を期待できます。救急車を呼んだ場合も、到着を待たず速やかに冷却を始めてください。なお、冷却中は一人にせず、必ず誰かがそばについて様子を観察し続けてください。
3-3.意識の状態を確認する
体を冷やしながら「呼びかけや刺激に対する反応がおかしくないか」を確認します。意識の状態の確認で重要なのは「意識があるかどうか」だけで判断しないことです。「返事がおかしい」「ぼーっとしている」「普段と様子が違う」といった状態も、熱中症のおそれがあるとして取り扱ってください。
判断に迷う場合は、安易に「大丈夫だろう」と判断せず、#7119(救急安心センター)などに電話して専門家の指示を仰ぐことが推奨されます。
3-4.水分摂取できるかを確認する
次に水分摂取できるかを確認します。
水分摂取の判断の目安は以下を参考にしてください。
状態 | 対応 |
意識がはっきりあり、自力で水分を飲める | 冷たい経口補水液やスポーツドリンクを飲ませ、涼しい場所で経過観察を行う |
吐き気・嘔吐があり、自力で飲めない | 経口での水分補給は禁止。救急車を要請し医療機関での点滴処置が必要 |
意識がない・反応がおかしい | 水分補給は行わず、誤嚥(液体が気管に入ること)のリスクがあるため、ただちに救急車を要請する |
自力で水分摂取できる状態であっても、経過観察中は一人にせず、様子を観察し続けることが必要です。
判断に迷ったときは、現場で様子見をするよりも早期に救急車を要請することを優先してください。
4.建設現場の熱中症対策に関するよくある質問

ここでは、建設現場の熱中症対策に関するよくある質問について解説します。
4-1.建設現場で役立つ熱中症対策グッズはある?
建設現場で役立つ熱中症対策グッズには、携帯型のWBGT測定器やファン付き作業服、保冷剤入り日よけ付きヘルメットなどさまざまのものがあります。これらを積極的に活用して、熱中症予防に役立てましょう。
4-2.建設業の熱中症対策に利用できる補助金はある?
厚生労働省が実施する「エイジフレンドリー補助金」などが、建設現場の熱中症対策費用の一部に活用できる制度として知られています。詳細は厚生労働省ホームページのエイジフレンドリー補助金を確認してください。
5.対策を十分に行い建設現場の熱中症を予防しよう

建設現場で熱中症を防ぐためには、WBGT値の確認や備品の整備、水分補給のルール化、健康状態の把握といった対策を日頃から組織的に実施することが重要です。令和7年6月1日改正された労働安全衛生規則では、熱中症の早期発見体制の整備と重篤化防止手順の作成・周知が事業者に義務付けられています。
熱中症対策の仕組みを現場に定着させることで、責任者が不在の日でも安全が維持できる体制を目指す必要があります。また、高血圧などの持病を抱える作業員が在籍している場合は、産業医への相談や服薬状況の把握を通じた個別対応が必要です。
熱中症による重篤事故は、安全配慮義務違反として法的リスクに発展する可能性もあります。従業員の健康管理を強化したい場合は「高血圧イーメディカル」のようなオンライン診療サービスの活用もあります。現場の熱中症対策の体制を整えるための選択肢の一つとしてお役立てください。
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